地域リーダー候補生
大学院工学研究院 特任助教
中島 佑太
専門分野:建築計画、3DCG
ゆかりの街
奈井江町
私は子供の頃、近所の本屋さんによく行っていました。吃音が原因でうまく気持ちが伝わらず、悔しくて情けない気持ちに寄り添ってくれる言葉を探してページをめくった日々を今でも覚えています。自宅でも学校(職場)でもない第三の居場所、私にとってのサードプレイスである本屋さんは、生きていくうえで欠かせない「心の避難場所」でした。今日、人口減少やコストアップなどの影響を受け、小さなまちからサードプレイスが消えつつあります。かつての自分を救ってくれた本屋さんのような居場所を、どうつくり・どう残していくか。難しくも、取り組む意義のある課題だと感じています。
その解決策の一つとして私が考えているのが、「空間メディアの民主化」です。これも吃音に端を発しますが、大学の建築設計課題では毎週のようにプレゼンの機会があり、口頭での発表はうまくいかないこともしばしば。しかし、プレゼン用に作った建築模型が、言葉よりも雄弁に私の設計趣旨を語ってくれました。この経験から、「空間」にコミュニケーションメディアとしての可能性を感じ、誰もが自由に空間を使って表現できる仕組みや場所をつくることができれば、それが小さなまちのサードプレイスを救う手立てになり得るのではないかと考えました。
具体的には、AR技術を活用して、小さなまちにつくられるリアル空間を舞台に、世界中の人々がバーチャル上で自分の「好き」を重ねていく、というものです。例えば、好きな服のセレクトショップや、趣味で撮った写真のギャラリー、空間をうまく使いこなしたリアル脱出ゲームなど、可能性は無限大です。これらが一つの空間に重なることで多様なニーズに応えられるうえ、物理商品を扱わないことで在庫まわりのコストが一切不要であることから、小さなまちでも持続可能なサードプレイスが可能になると考えています。
私のゆかりのまちである奈井江町には、地域再生推進法人「ないえ共奏ネットワーク」をはじめ、たくさんのキーパーソンがいます。そうした方々の力を、「重ね合わせ」られる地域リーダーになりたいと思います。
地域リーダー候補生
大学院工学研究院 特任助教
渡辺 康平
専門分野:態度行動変容(これから学んでいきます)
ゆかりの街
当別町
私は石狩市に生まれ育ち、札幌で北大学生時代を過ごし、当別町に就職しました。就職先として当別町を選んだきっかけは、就職活動をする中で、様々な取り組みに挑戦する「面白そうなまち」だと感じたことです。当時の当別町は、北海道の在来線では約20年ぶりの請願駅となるロイズタウン駅の開業や、義務教育学校「とうべつ学園」の開校など、特色あるまちづくりが進められていました。そして、自分もその仲間としてまちづくりにチャレンジしたいと考えたのです。
当別町では広報広聴係として、まちを代表するイベントである夏至祭やスウェーデンマラソンをはじめ、入学式や商店街のお祭りなどの取材を通じ、まちの魅力を伝えるために様々な行事の様子を広報誌などで発信してきました。行政の言葉はどうしても堅くなりがちですが、住民の皆さんにとって分かりやすく、親しみやすい伝え方を意識して取り組んできたので、まちの魅力や情報が「きちんと伝わる」ことの大切さを強く実感しています。
その中で次第に関心を持つようになったのが、「情報が伝わること」と「人の行動が変わること」は必ずしも一致しないという点です。たとえば、イベントや制度を周知しても、実際の参加や利用につながらないケースも少なくありません。どのような伝え方であれば関心を持ってもらえるのか、行動のきっかけを生み出すには何が必要なのかという視点を強く意識するようになりました。現状にとどまらず、まちをもっと盛り上げ、新しい価値を生み出していくには、人の意識や行動の変化は必要不可欠であると感じています。
4月より当部門に着任し、挑戦できる機会をいただいた今は、人の行動変容に関する知見を学びながら、まちの取り組みを実現へと導く後押しを実践していきたいと考えています。現場で得られる気づきを大切にしながら、人の行動につながる伝え方や仕組みづくりを模索していきたいです。そして、まちの人たちから信頼され、一緒に新しい未来に向けて歩んでいける、そんな人間になるのが目標です。
兼任担当・部門長
大学院工学研究院 教授
岸 邦宏
専門分野:土木工学、交通工学
ゆかりの街
士別市
北海道新幹線ができたら、どんな未来になるだろう。また、別の地域では鉄道を残すべきか、バスに転換するべきか、どちらが沿線住民に便利だろう。そのように、交通全般と人々との関係から地域にとってより良い交通のありようを研究しています。その成果により、関係者の合意形成や自治体の政策決定を支え、そこから生まれる研究ニーズに応える——それを繰り返し、地域の人たちと信頼関係を築き、まちの未来を一緒に考えてきました。そこで思うのは、地域リーダーとなる人はビジョンをもつべきだということ。共感してくれる仲間を増やし、必要とあらば制度や組織を変革し、課題に挑むのです。当部門は、地域リーダー候補のみなさんが、北海道大学に蓄積された知を吸収するための拠点となり、それぞれのまちで新たな枠組みのまちづくりをはじめるための支えとなります。
兼任担当
大学院工学研究院 教授
石井 一英
専門分野:環境工学、循環共生システム
ゆかりの街
札幌市
学問の世界は細分化されていますが、社会問題や地域課題は複合的です。だから、専門分野や得意な手法にとらわれず、目の前の問題を素直に見て、それに応じた研究手法を用いてひたすら解いてきました。自治体や企業とチームを組み、「ごちゃまぜ」「ワイワイガヤガヤ」の交流の場を大事に、研究を進めています。まちづくりを山に例えると、山を形づくっているのが地域の歴史であり、山頂は理想のまち。登山口は地域課題で、登山道に現れる「脱炭素」「DX」といった看板は解決策のヒント、山登りのエネルギーとなるのが、人のつながりを含めた地域資源です。地域リーダーは、仲間たちの先頭に立ち、あるいは横に並び、あるいは最後尾から、山頂を目指します。そんなふうに地域に寄り添うリーダーが、当部門から生まれると期待しています。
兼任担当
大学院工学研究院 教授
森 傑
専門分野:建築計画、都市計画
ゆかりの街
上士幌町
建築を手段とし、その目的を「楽しく豊かな生活」とするなら、建物をつくらないから良くなる世界もあると考えています。そこから、まちを一人の人間ととらえる「まちの整体」「まちの寿命」という概念に至り、被災地の復興や中心市街地の再整備などに取り組んできました。そのなかでいつも思うのは、外部の人間にできることの限界。なので、地域リーダーは、そのまちの人であるべきです。当部門は、一緒にリアリティのある夢をみる場でありたいですね。学問の世界は、まだ誰も知らないことを探究するから、夢みがちです。一方、地域課題と対峙している当事者は現実にどっぷり浸かっています。お互いに一歩ずつ踏み出し、研究者はもう少し現実を、地域リーダーはちょっと夢をみる勇気をもつ。そのとき、新しい世界がひらけると思うのです。
兼任担当
教育イノベーション機構 准教授
奥本 素子
専門分野:科学技術コミュニケーション
ゆかりの街
幌延町
サイエンスコミュニケーションという、科学と社会をつなぐ架け橋となる活動をしています。この「つなぐ」は、まさに研究者と地域の人たちとの共創を意味し、科学を社会に実装するためには不可欠です。そもそも、地域に最先端の科学技術?と、意外に思われるかもしれません。しかし、一次産業ではドローンや衛星技術が使われており、北海道は再生可能エネルギーの供給場所としても注目されています。ただ、科学技術はメリットだけを享受できるものではなく、そのリスクや適切な運用を地域で話し合いながら使っていく必要があります。そのとき、リーダーが地域を引っ張っていくだけではなく、地域全体がパートナーシップを結べるように、どのようなコミュニケーションがふさわしいのか、この部門で考えていきたいと思います。
兼任担当
大学院公共政策学連携研究部 教授
山崎 幹根
専門分野:地方自治論
ゆかりの街
東神楽町
住民の声を政策に反映させやすいことから、「地方自治は民主主義の学校」といわれます。ただ、それは理念であり、現実には、地方選挙の投票率の低さ、首長や議員の不祥事など、学校たりえない例に事欠きません。その理想と現実の乖離はなぜ、どのように起こるのか、それは埋められるのか、そもそも地方自治体の意思決定のプロセスやメカニズムとは——。政治学をベースに地域課題と向き合ってきました。現代はこれまでに経験のない人口減少時代であり、公共サービスの広域連携あるいは「たたむ/閉じる/縮める」を断行せざるをえません。多少の不便を受容しながら、そこそこの幸せを実現するような地域社会をどう創っていくのか。地域リーダーがその難題に挑むことが求められます。当部門は未知への挑戦の場であると期待しています。
専任チームリーダー
大学院工学研究院 特任准教授
竹口 祐二
専門分野:地域交通、モビリティ・マネジメント
ゆかりの街
利尻島
私は地域交通や地方活性化をテーマに土木計画学という分野で研究に携わってきました。この分野は従来、方法や技術を重視していましたが、近年は政策や実践にどう結び付けるかという点に注力されています。X-UPでの私の役割はまさに理論と実践をつなぐ現場として、北海道大学の結集知を地域リーダー候補者たちに注いでいくことになります。候補者の個性や適性を観察しながら、マネージャーのように、あるいはプロデューサーのように、ときには兄貴のように候補者たちを支えていきたいと思います。地域の魅力や人材が重なりあうことで、ふるさとや地域リーダー候補者に、Grow Up(成長する)、Meet Up(集まる)、Team Up(チームを組む)、Light Up(輝く)など、様々なUpと明るい未来が芽吹くと信じています。